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−鋳造設計の基本−

このページでは、鋳造技術にまつわる話を
散りばめて、アレコレ、話題にしていきます。

「鋳造欠陥とその対策」※1
「基礎から学ぶ鋳造工学」※2
(日本鋳造工学会)が参考になりました。

アグネ技術センター 鋳造伝熱工学 新山英輔著は
鋳造設計の基礎がうまくまとめられています。
凝固工学―新材料開発への一路 中江秀雄著は、
結晶成長に詳しい本です。(※4)

鋳造シミュレーション技術 ●鋳造の技術史
鋳造欠陥の整理
●「鋳物の技術史(人物編)」も編集中です。
1.数値解と解析解の違い

  数値解とは、微分方程式を積分するなどして、関数の
  形で得られた厳密解。

  解析解とは、差分法などの数値演算による近似解。

  数値解は、変数と解が一目で分かり、関数の形に
  なっているので、式に変数を代入すると解が直ちに
  求まる。しかし、単純な問題しか解けない。

  一方の解析解は、複雑な問題にも適用できるが、
  条件が変わるたびに、いちいち、計算しなおさなけれ
  ばならない。一目で分からず、見通しが良くない。

  
●直観を大切にする

出来る限り、解析解を使った方が
物理現象に関して、理解が深まり
ます。また、数値解を使うときでも、
解析的に整理が必要です。

●シミュレーションに溺れない

市販の鋳造シミュレーションソフトは
色々な解析が出来て、便利では
ありますが、正しく活用するためには
計算の内容を理解しておくことが
大切です。研究を目的とする時は
市販のソフトでは満足できないので
プログラムが自作できるのが良い。
2.数値解の技法について

  数値解法には、差分法・有限要素法などがあります。
  さらに、それらにも、細かく、種々の手法がありますが、
  大まかに言えば、精度や計算速度に大差ありせん。

  差分法の代表的なものが、陽的差分法と呼ばれる
  ものです。(陰的差分法もあります 下の7.参考)
   数値解の歴史ついて詳しくはこちらのページへ
   陽的差分法(陽的解法)のことを、前進差分法、
   陰的差分法(陰的解法)のことを、後退差分法、
     とも呼び、陰的解法のには、後退差分法の他に
     クランク-ニコルソン法(改良オイラー法)もある。

   実際の複雑形状をしたモデルにおいては、差分法
   ではなく、有限要素法、境界要素法があります。

●差分式の展開(離散化)

物理現象→微分方程式→差分式
という流れで、数値解を解きます。
差分式にする時の展開の方法には
テーラー展開(有限差分法)などが
あります。

厳密な、微分方程式を差分式に
変換する技法(離散化)については、
コンピュータ伝熱・凝固解析入門
(大中逸雄 著)が参考になります。
でも、初めての人には難しいかも。

3.計算領域の定義について

  コンピューターを使ってシミュレーションをする場合、
  計算・解析の対象となる領域をメッシュで切ります。
 (要素分割とも呼び、オイラー系の手法と呼びます。
  一方、要素分割が不要のラグランジュ系の手法、
  例えば、粒子法というものもあります。)

  メッシュで切った領域(要素)に、物理的な値(温度
  など)を持たせて計算しますが、その値を持たせる
  位置(節点:node)を、要素の中心にするか(内接点)、
  要素の頂点に設定するか(外節点)で、計算式が
  変わります。(流動計算の流速は、辺に持たせます)

●節点

一次元等分割による直接差分法
 iは節点で、斜線部は節点領域

(内節点法)


(外節点法)


4.鋳造に特徴的な熱の取り扱い(潜熱)

  鋳造工程においては、金属が固まります。つまり、
  液体から固体になるのですが、その時に、潜熱と
  呼ばれる熱を出します。これが、特徴です。
  純金属は一気に潜熱を放出し、合金は、グズグズ
  液相線と固相線の間で温度低下しつつ放出します。

  この過程を数値計算する場合、主に3つの方法で
  取り扱うことが知られています。

  (1)温度回復法 純金属に適している。
  (2)等価比熱法 等価とは、見かけ、の意味で、
             温度によって見かけの比熱を使う。
  (3)エンタルピー法(含熱量法) 含熱量と温度との
             関係は右図のとおりになる。
             純金属、合金、共晶で同じような
             プログラムで扱え、すっきりした形。
●含熱量と温度との関係


熱力学的な、平衡状態(マクロな視点)
ではこうなる。実際には、過冷却や
結晶の核発生、成長など非平衡な
状態になる。(ミクロな視点)になる。

5.凝固形式と凝固温度範囲※2

  金属が固まる時に、その形式は主に2つあります。

  (1)表皮形成型
     純金属のように、凝固温度範囲が0か、狭い
     温度範囲を持つ合金(Skin formation)
     純銅、アルミニウム、青銅、黄銅、クロム銅など
     固相・液相が完全に分かれるため、収縮に
     対する溶湯補給が容易。適当な押湯を設けて
     欠陥を排除することが容易。

  (2)かゆ状型(マッシー型)
     温度範囲の広い合金に見られる凝固形態。
     りん青銅、すず青銅、洋白(Cu・Zn・Ni,500玉)
     等は、固相率が50〜70%になるとかゆ状になり、
     生成したデンドライトの樹間に微細な収縮巣
     (ミクロポロシティ)が発生。冷金か金型を用い
     温度勾配を大きくとり、指向性凝固させる。
     Cu-Sn系合金では、かゆ状凝固により収縮巣の
     発生とSnの偏析、逆偏析が生じる。  
    純金属     短い凝固範囲の合金


中位の凝固範囲の合金 長い凝固範囲の合金


デンドライト凝固の場合は、ダルシー
流れをモデルとして計算しています。
(下の凝固形態を考慮した流動停止)
 【凝固形態を考慮した湯回り不良予測(流動停止)】

  湯回り不良がどこで発生するのか予測するには
  (1)溶湯(湯先)の温度の低下(固相率の上昇)
  (2)鋳型内の圧力の上昇(背圧)
  などを見るのが普通ですが、JSCASTでは、右の
  図のように金属の種類によって、さらに詳しく評価
  できるようになっています。(純金属、鋳鉄、合金で
  凝固形態が異なるため、凝固形態を選択できます)

 (クリックで見やすくなります)
便利な操作説明書を用意しています。
6.差分式の精度と、風上差分と中心差分

  テーラー展開を打ち切る際に、儿のオーダーで
  打ち切る場合を、1次精度、あるいは、差分近似の
  オーダーは1次であると表現し、儿の2乗の項を
  2次精度であると表現します。
  
  Xの関数のφ(X)を考える場合、Xの前後の関数値
  φ(X-1)、φ(X+1)を使う場合を中心差分と呼び、
  Xの値であるφ(X)と、Xの後の関数値、φ(X-1)を
  使う場合を後退差分と呼びます。そして、後退差分を
  使う方法を風上差分と呼びます。風上差分は、中心
  差分を安定させる目的で使います。

  1次精度の後退差分を用いた場合、1次精度風上
  差分スキームという表現をします。
  

7.陽解法と陰解法

 空間と時間が同時に変化する時、横軸に空間(X)、
 縦軸に時間(t)をとり、時間tにおける座標(Xi)と、
 その前後の値から、未知の時間t+凾狽ノおける
 座標Xiの値を求めるのが陽解法です。

 一方、時間tにおける座標(Xi)と、その前後の値、
 そして、未知の時間t+凾狽ノおける座標Xiの前後の
 値から、時間t+凾狽ノおける座標Xiの値を求める
 のが陰解法です。

 陰解法の法が計算が複雑になりますが、冲の
 値を大きく出来るので、結果が早く出る(収束する
 と表現する)ことが、多々あります。
●陽解法と陰解法のイメージ

8.連立方程式の解法

 例えば流れの計算の場合、運動量保存則(ニュートンの
 第二法則を変形したもの。流体ではナビエストークスの
 式とも呼ぶ)と、質量保存則(セル内の物体の質量の
 情報)を連立させた微分方程式を解きますが、実際に
 パソコンで計算させるためには差分式にして、つまり、
 運動量保存則の差分式(主な未知数は、速度、圧力等)
 質量保存則の差分式(主な未知数は速度等)を解きます。
  (方程式の概要は、便利な操作説明書にもあります)
 2つの保存則の式で共通して未知数である速度を消去
 するように連立させた差分式(主な未知数は、圧力)を
 圧力方程式と呼びます。(右の上段のn個の式)

 計算するセルがn個有るとすると、連立させた差分式も
 n個有り、マトリックスにして一度に解くことになります。
 (右の下段の式)例えば、SOR法などを使って解きます。

(クリックすると拡大します)

このマトリックスをSOR法等で解く。

9.合金のデンドライト凝固(※4)

 多くの実用材料は合金です。純金属と異なり、通常、
 合金の凝固界面は不安定で、G(固液界面での温度
 勾配)とV(結晶成長速度)が小さくなるに従い、
 結晶の先端が突起してきます。熱の流れ方向に加え
 直角方向にも凹凸が生じた結晶がデンドライトです。
 (界面が荒れる場合、ノンファセット凝固とも言う)

 固液界面が荒れた時にデンドライトの形になります。
 半導体のシリコンやゲルマニウムのように平滑な
 固液界面の場合は、リボン状結晶になります。
 (界面が平滑な場合、ファセット凝固ともいう)

 金属とシリコン(非金属)合金の場合、「共晶」になり、
 組み合わせとして考えられるのは、下記の3つです。
 (1)ノンファセット/ノンファセット(Ni耐熱合金など)
 (2)ノンファセット/ファセット(Fe-C系、Al-Si系)
 (3)ファセット/ファセット →セラミックなので割愛


 (b) → (c) → (d) → (e) でG/Vが小

 Fe-C系の代表的な材料、鋳鉄では
 通常は組織中にデンドライトは見え
 ませんが、晶出した黒鉛(C)の形に
 眼がだまされてい見えないだけで、
 凝固中に液相を除くと見えます(右)

デンドライトが太り、等軸晶、柱状晶に。



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