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このページでは、鋳造過程で発生する欠陥
(鋳造欠陥)について紹介しています。

「鋳造欠陥とその対策」※1(日本鋳造工学会)が
参考になりました。大阪大学での実験結果も
含めて、整理をしていきたいと思います。
「基礎から学ぶ鋳造工学」※2も分かりやすいです。
(2020年9月11日)

コロナ社 大学講義シリーズ24 溶融加工学※3
読みやすいです。(大中逸雄・荒木孝雄 共著)
アグネ技術センター 鋳造伝熱工学 新山英輔著は
押湯について詳しく書いてあります。

鋳造シミュレーション技術 ●鋳造の技術史
●「鋳物の技術史(人物編)」も編集中です。
凝固欠陥として※3

1.ミクロ偏析
2.マクロ偏析 (正偏析・負偏析、正常偏析・逆偏析、V偏析
           逆V偏析・A偏析)
3.気孔欠陥  (ガス気孔欠陥、ひけ巣欠陥)
4.高温割れ
5.その他の欠陥 (組織欠陥、介在物欠陥、高温変形)

などがあげられます。このページでは、特に、3.気孔欠陥に
ついてとりあげています。

SEM(走査型電子顕微鏡)を使って、欠陥内部の拡大画像が
得られ、やEDS(エネルギー分散型X線分析)を使って、
成分の分析をします。

鋳造欠陥の名前、 鋳造法、 金属の種類、 要因、 対策の
順番で書いてあります。(対策は方案で出来るものを優先)
※1


「優れた鋳物製造のために
必要な10のルール」※2
(John Campbell教授)

1.良い溶湯の準備
2.湯面の乱れをなくす事
3.表面酸化物の取り込みを
  なくすこと
4.気泡の取込をなくす事
5.中子ガスを逃す事
6.引け巣対策(押湯設計)
7.溶湯の対流防止

8.偏析防止
9.残留応力の低減
10.寸法基準点の正しい
   設定

上記のうち、2〜7までが
鋳造方案に関係するもの。
鋳造欠陥の8割は注湯時の
湯面の乱れによるもの。
鋳造品を製作するための生産設計を「鋳造方案」と
呼びます。

内引け巣 低圧鋳造 アルミ合金(AC2B)
 
右は拡大写真 その部位が速く冷却されるようにします。

鋳鉄などでは、冷却速度が早過ぎるとチルや割れ等の
欠陥が生じやすく、アルミニウム合金では、冷却速度が
早い方がポロシティ欠陥が発生しにくい。

凝固設計について※3

製品の薄肉部→厚肉部
→押湯の順に凝固を終了
 させます(指向性凝固)

1.押湯の場所と個数
  有効範囲の表を参考にする

2.押湯の種類と形状

内引け巣 生型 ねずみ鋳鉄(FC300)

中子ガスの発生による欠陥。押湯設計、冷やし金の活用。

3.押湯の寸法

  押湯方程式というものがある。
  モジュラスM(M=V(体積)/S)
  を使って凝固時間を表現した、
  クボリノフの式がある。

4.冷や金の設計
  指向性凝固によって
  ホットスポットの位置を
  変更できる。

5.肉厚こう配による
  押湯の省略も可能
ざく巣 フルモールド鋳造 球状黒鉛鋳鉄(FCD600)

凝固時の体積収縮による溶湯供給不足 鋳込み温度を
上げる。 

●湯口設計について※3
 
 (流動設計
1.湯口系の種類の選択

ザク巣 フルモールド鋳造 球状黒鉛鋳鉄(FCD450)
 

鋳込み温度が低いと集中型、高いと分散型になる。
(上:1398℃ 下:1453℃)
鋳込み温度を低くする。冷やし金を使って指向性
凝固させる。

2.湯道、堰の数、位置
  寸法 

  溶湯が均等、迅速に
  流入するようにする

3.湯口比
  湯口断面積の設計

  加圧方式(鋳鉄系)
  非加圧方式(Ai,Mg合金)

4.鋳込速度、鋳込温度

  速い→砂かみ、のろかみ
      ガス欠陥、鋳型破損
  遅い→湯まわり不良
      湯じわ、照らされ
  高い→ガス、ひけ巣欠陥

(参考)
 注湯時に生じる鋳型破損の例


 溶湯流により、鋳型の一部が
 欠ける → 飛ばされ、
 鋳型の一部がえぐられる
  → 荒され(洗われ)
 鋳型と溶湯が反応する→焼着き
ガス吹かれ(ブローホール) シェルモールド鋳造
ねずみ鋳鉄(FC250)

粘結剤を減らす、空気およびガス抜きを適切にする。

ピンホール(残渣がスラグ化) 生型鋳造 球状黒鉛鋳鉄
(FCD450)

黒鉛球状化剤の残渣。球状黒鉛化処理温度、出湯温度を
上げる。

5.ヘッドの有効高さ

  有効ヘッドの高さを
  ベルヌーイの式に適用
  して、湯口比、鋳込
  時間を使って、湯口系の
  断面積が決定される

<方案に正解はない> 
@ 堰の設置位置
A 湯道の形状(湯流れの方向性)
B 押し湯のサイズ、位置
C 湯口、湯口底、湯道
  (断面積など 湯口:湯道:堰総断面積)

<方案の自動設計の注意点(ソフトを信じてはいけない)>
シミュレーションソフトの自動設計に慣れると
最終充填部、最終凝固部しか見ないように
なる傾向があります。現象のメカニズムの理解し、
過程が分からないといけません。そのためにも、
特に商用の鋳物の場合は、ミニマムコストが
要求され、仕上げの様子など(中子と仕上げは
コストに関係する)現場を見ないと分からない
ことも含めて、色々な検討が必要になります。
もう少し、詳しく知りたい方は→
鋳造技術のアレコレ へ

色々な検討とは、

仕上げに方案の痕跡を残さない
型バラシしやすい、
見切り面の制限、堰の除去
除肉(駄肉の除去)、
歩留まり向上など、




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